薄く透き通るような花びらの魅惑的なケシの花。真紅や紫、白が基本色だそうですが、
ケシ(芥子)と総称されている中にはヒマラヤの青いケシと呼ばれるブルーポピー、
朱や黄色など園芸品種も数多く、また道端で最近よく見かけるナガミヒナゲシも
その仲間です。

一方、ケシは医薬品の原料として重要な植物で、モルヒネ、コデインなどアヘンアルカ
ロイドと称する物質群を多く含む種は特に末期癌の疼痛薬原料として
欠かせない存在になっています。

しかし、使用法を誤ると、強い依存性が現れる麻薬であるために、各国で
法律により厳しく使用が制限されています。

日本でも昭和29年4月22日に制定された『あへん法』により、栽培が固く禁止
されている「けし」が東京都薬用植物園では研究・種子保存、医・薬学生の
実地研修用として、厳重なガード柵の中で栽培されています。
(2007年5月6日ケシのミニ講座から)

『あへん法』により栽培が禁止されているケシ類はインドから小アジアにかけての
西アジア原産とされるケシ科ケシ属の一年草で、ソムニフェルム種のケシ、アツミゲシ、で
草丈は1メートルから1.5メートルになります。またペルシャ地方原産の多年草ハカマオニ
ゲシは、「麻薬及び向精神薬取締法」により栽培が禁止されています。花はオニゲシ
(オリエンタルポピー)に似て草丈は60〜100cm。全体に白色の剛毛が生えて
いますから要注意です。

同園で栽培されている代表的な品種は「一貫種」とトルコ種で、「一貫種」は
昭和初期に日本で作り出され、1反(10アール)当たりのケシから約1貫匁
の生あへんが取れる収量の多い品種で白い花もジャンボです。


☆ 左上の一貫種は満開時の花の径は14〜15センチ以上あります。

☆ 上中央はトルコ種。紫色の濃淡のグラデーションが魅惑的で花も大型。

☆ 上左のアツミゲシは北アフリカ原産の一年草ですが、渥美半島に帰化
  して一時期大繁殖したことから、アツミゲシと呼ばれています。一貫種
  やトルコ種より小型です。

☆ ハカマオニゲシは植えてもよい真紅のオニゲシに似ていますが、花の
   下に苞葉があります。

2007年5月6〜25日までケシ栽培区は一般公開されており、外柵の中から見ることができます。

○ 植えてはいけない「けし」の見分け方のポイント

@ 植えてはいけない品種は茎や葉にほとんど剛毛がありません。
   植えてもよいヒナゲシや観賞用に多く栽培されているアイリッシュポピー
   オリエンタルポピー(オニゲシ)には可憐な花にも関わらず茎葉が毛深いのが特徴。
A 植えてはいけないケシの葉には葉柄がなく茎を巻くように抱いています。
   植えてもよいケシは葉柄があり、茎を抱いていません。
B 植えてはいけないケシは葉の切れ込みが比較的浅く、植えてもよいケシは葉が羽
   状に深く裂けています。
C ハカマオニゲシの場合は栽培禁止種ですが、茎葉に白い毛があり、葉も深く裂けて
   おりますが、花は真紅で花の下に苞葉が5〜7枚首飾りのようにつけています。


観賞用として広く栽培されているオニゲシは多年草で、基本種は橙色ですが、
オリエンタルポピーと称して赤、ピンク、白やブラックアンドホワイト
など様々な園芸品種がアイリッシュポピーと同様出回っています。

幻のケシとも言われたヒマラヤ産のプルーポピーの開花中は
温室入口の冷房コーナーに展示されています。

最近、路傍に殖えてきたナガミヒナゲシは、その果実が長いことが名前の
由来。ハナビシソウもケシ科の仲間で蕾が菱型をしているのが特徴。

またお馴染みのヒナゲシはヨーロッパ原産の一年草で、フランスではコクリコ、
虞美人草の名でも知られています。中国の乱世・秦末期の武将項羽が
敵将劉邦に敗れて自刀した愛人・虞の墓にこの花が赤く咲いた
伝説からその名がつけられたそうです。


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